爪と目/藤野可織(2013年上半期受賞)


3歳の女の子の視点で、主人公の女性のことを「あなた」と呼んで物語が進められる二人称小説です。主人公は女の子の父親と愛人関係にあり、女の子の父親、その愛人の主人公、女の子の3人を中心に話が進みます。

ネットの書評を見ると、猫視点の「吾輩は猫である」を引き合いに出されたりしていますが、感想としてはとにかくまだるっこしいの一言。

3歳児がそんな難しいことをわかるわけない、というツッコミは野暮だと思いますし、二人称にしている理由もわからなくもないのですが、「あなた=主人公の女性」という読み替えが理屈ではわかっても感覚的には違和感があり、常に頭の中で変換しなければならないのがネックです。

読みづらいというほどではなく、基本的には平易な内容ではありますが、技巧が先走って、結局「だから何?」という印象。

「爪と目というのはそういう意味かぁ~」と感じたのが、唯一の感想というぐらいで、あとは特に心に残るものはありませんでした。

↓アマゾンでの評価も低め。芥川賞というフィルターがなければ普通の作品なのかもしれませんが、、
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