ダイヤモンドダスト/南木佳士(1989年下半期受賞)


軽井沢に暮らす看護師の主人公とその家族の物語。記念すべき第100回芥川賞受賞作品です。節目の受賞にふさわしい、これぞ純文学ともいうような正統派の作品でした。

イメージ的には吉永小百合とかが出演している古典的な邦画、もしくは「北の国から」のような感動ドラマのような印象です。
派手さはないけど、静かでよい雰囲気の作品でした。

特に主人公の父親が入院して、同じ病室で親しくなったアメリカ人宣教師が語るベトナム戦争のエピソードが秀逸でした。

母が死に、妻が死に、宣教師が死に、そして父も死ぬ、そんな死にまつわる話ですが、どん底の暗さはなく、冬の別荘地の静けさのような感情の起伏の小さな感じが暗さを和らげています。

唯一気になるのが、主人公の幼なじみの女性の存在です。隣の家に住んでいて、小中高の同級生。アメリカ留学から帰ったばかりで、地味な主人公とは対照的な華やかで快活な女性です。主人公とは明らかにそのうち結婚するであろう親密さなのですが、この物語においては下世話な気がして、どうも違和感がありました。

映画やドラマで言うところの「マドンナ」の役回りで、興行的には若手の人気女優やアイドルを起用しそうなポジションですが、現実的に考えると、そんなやつおらんわぁと言いたくなります。

↓アマゾンではなかなか高評価です。南木氏自身佐久中央病院の医師だそうで。
ダイヤモンドダスト (文春文庫)

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