趣味で鉱物を研究する主人公が、石に興味を持つきっかけとなったレイテ島の悲惨な戦場の記憶と、戦後に家族に起きた事件を重ね合わせるミステリアスな作品です。
レイテ島で戦友を殺してしまう夢なのか現実なのかわからない記憶と、自分の子供が何者かに殺されてしまう不幸な事件が重なり、妄想の世界で混沌とするのですが、夢と現実の境い目があいまいで、読みやすい文章ではありながら、ストーリーをきちんと理解するのはなかなか困難でした。
大衆小説的な読むやすさがあるので、純文学というよりミステリーののようですが、言わば、最後まで答えの出ないミステリーという感じ。
それぞれのエピソードが「石」というテーマで繋がってはいるものの、どうもタッチが軽くて、芥川賞という点では個人的には少し微妙な気がしました。
レイテ島から始まり、終戦後結婚して子供ができて、ぐらいまではいいのですが、その子供が大学生になって、学生運動に没頭し、という展開になってくると、おいおいどこまで行くねんという感じ。
時の流れは長大ですが、結局そうまでして何が言いたかったのかよくわからず、深そうに見えて浅い、と見せかけて実は深い、のかどうかは私の読解力ではよくわかりませんでした。
↓アマゾンのレビューではなぜだかみなさん高評価。やっぱり実は深い作品なのかなあ、
石の来歴 (文春文庫)
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