染色工場でアルバイトをしている主人公が同僚の佐々井という男と友人になる。この佐々井というのがなかなか不思議な人物で、色んなことを知っていて哲学的で、物静かだけどタダモノではない雰囲気。そんな佐々井から相談を受けて、ある仕事を始める。そんな物語です。
池澤夏樹氏は理系の村上春樹というキャッチフレーズがあるらしいのですが、この作品に登場する「佐々井」はまさにそれを体現するキャラクターだと思います。
とにかくハイセンスな例えを連発し、結局何を言ってるかよくわからない感じ。身近にこんなやつがいたら相当やばいけど、フィクションだから許される感じ。
これが村上春樹作品なら、佐々井の聞き役は女性なんだろうな、などとどうでもいいことを考えてしまいました。
ところで、アマゾンでこの作品のレビューを見ると、透明感があるだとか、美しい文章だとか、とにかく大絶賛なのですが、正直私はあまりピンと来ませんでした。
佐々井との出会いやその後の交流のシーンはまあ良いのですが、後半に佐々井から依頼される仕事の話が残念で、一気に世界観が崩れた印象でした。
あえてそういうストーリーなのは理解できるのですが、只者ではない雰囲気の佐々井からの依頼が案外普通で、そこからの展開もなんだか想定の範囲内という感じで物足りなさが残りました。
個人的には起承転結は無視してでも、謎めいたまま物語を終えてもいいんじゃないかと思いました。
もちろんそこも含めて、好きな人には好きなポイントなんだと思いますが、だったら村上春樹のほうがいいなあ、というのが率直な感想です。
↓前述のとおりアマゾンでは大絶賛です。こんなに絶賛されてる作品はないんじゃないかというぐらい。
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