過越しの祭/米谷ふみ子(1985年下半期受賞)


ユダヤ人男性と結婚した日本人女性がアメリカで文化の壁に阻まれながら孤軍奮闘する物語。窮屈な日本を離れ、自由を求めて渡米したのに、閉鎖的なユダヤ人社会はもっと窮屈だった、というなかなか興味深いテーマです。


吉目木晴彦さんの「寂寥郊野」ととても印象が似ていたので、Wikipediaで見てみると、米谷ふみ子さんも吉目木さん同様にアメリカ在住とのこと。さらにこの物語の主人公と同じく、子どもに脳障害があるようで、どうやら自伝的作品みたいです。

だからこそなのですが、純粋に物語として見た場合に、子どもの脳障害というエピソードが必要なのかどうか、とても違和感を感じました。

この作品のメインテーマは異国の地、なおかつ特殊なユダヤ人文化という異文化の中で暮らすことの難しさや不自由さだと思うのですが、そこに障害児というもう一つの「不自由さ」がテーマとして加わってくると、ただただ著者の苦労話を聞かされているようで、「大変だね。がんばってるんだね」と言ってほしいだけのようにも読めてしまい、正直散漫な印象でした。

著者を取り巻く事実がそうである以上仕方のないことだと思うのですが、一方でこれがエッセイではなく文学作品なのであれば、実体験とは異なったとしても、もう少し整理したほうがいいんじゃないかと思いました。

↓アマゾンでもレビューはすくないです。
過越しの祭 (岩波現代文庫―文芸)


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