ネコババのいる町で/瀧澤美恵子(1989年下半期受賞)


かつて読んだことがある気がするのですが、すっかり内容は忘れていました。ちなみにネコババというのはコソ泥行為ではなく、お隣住んでいる猫をたくさん飼っているババという意味なのですが、それさえも忘れてました。。

ストーリーとしては、アメリカで生まれた日本人の少女が3歳で母と別れて単身日本の祖母の家に移り住む話です。

最初は英語しか話せなくて苦労するけど、お隣のネコババに優しくしてもらったりするうちに日本に馴染んでいき、中学、高校と進んでやがて結婚する、という女性の前半生を描いた物語なのですが、だから何?という印象しか残りませんでした。

女性が読むと何か共感できるところがあるのかなあ?

例えば、名古屋に住んでいる離婚した父親に会いに行くシーンが一つの山場なのですが、予定調和な展開で、ドキドキもしないし泣けもしない。正直作者がなぜこのシーンを描こうと思ったのかよくわかりません。

起伏のない物語は芥川賞ではよくあるのでそれはそれでよくて、別に劇的な事件が起こることが必要だとも思いませんが、そうではなく人の心の動きを描く物語だとすると、いかんせん大雑把すぎる気がします。

年代を遡って読んでいるので時代が逆ですが、長嶋有さんの「猛スピードで母は」をパワーダウンさせたような印象の作品でした。

↓アマゾンのレビューは少ないですが、評価は高いです。こういうのが好きな人がいるのは理解できます。

ネコババのいる町で (文春文庫)

1980年代の受賞作一覧に戻る

芥川賞作品レビュー