主人公の男と沖縄の浦添のスナックに勤めるホステス3人が、真謝島に厄払いに行くロードムービー的な作品。「御嶽(うたき)」や「ユタ(巫女)」「マブイ(魂)を落とす」など、沖縄の民俗信仰に関するキーワードがたくさん登場する不思議なお話です。
沖縄県民の感覚がわからないので、スナックに豚が闖入し大暴れ、その厄払いのために離島に祈祷に行ったり、自分の父親が風葬されている遺骨を拾いに行ったり、なんてことが実際にあるのかどうか判断がつきませんが、本土人の感覚からすると、さすがの沖縄でもそんな話はないだろう、と首を傾げたくなります。
登場人物のキャラや台詞回しなんかもどうも演劇じみていて、「作り物感」が否めません。
全然知らなかったのですが、1999年に映画化もされたようで、言われてみれば確かにインディーズ邦画な匂いがします。
世界観は決して嫌いじゃないものの、小説として見た時には、もっとうまいやり方があるんじゃないかと感じます。
スナックのホステスという設定である必要があるのかとか、主人公の父親の話は必要なのかとか、もっとそぎ落とせるし、もっと掘り下げられるような印象を受けます。
沖縄好きの人が沖縄の雰囲気を味わうにはぴったりだと思いますが、あくまでも沖縄文学であり、沖縄という前置きなしに楽しめる作品ではないように思いました。
この作品を沖縄の人がどういう感想を持つのか聞いてみたい気もします。
↓アマゾンのレビューは「生命力」を評価する人と、「ただ沖縄っぽいだけ」という評価と二分されています。
豚の報い(Amazon)
1990年代の受賞作一覧に戻る