この作品の読みどころは、主人公が生まれ育った四日市と、現代の川崎のコンビナートの風景をオーバーラップさせる手法だと思いますが、私はそこよりも海芝浦駅をはじめとする「身近なファンタジーの世界」がポイントだと思いました。
夢の世界は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のような雰囲気ですが、銀河鉄道みたいな大掛かりな舞台装置がなくてもファンタジーが成立する、というのが新鮮でした。
というか、最初は海芝浦駅なんてものは実在しなくて、あくまでも夢の中の架空の駅なんだろうと思ったのですが、調べてみると本当にあってびっくり。もう一つ出てくる都立家政という駅も、自分があまり利用しない路線なので知らなかったのですが、西武新宿線の駅なんですね。
東京に住んでいても、ふと見落としていたようなちょっとしたファンタジーが心地よく、読みながらあれこれ検索して調べてしまいました。
物語の面白さはさておき、描かれる情景の着眼点はすごいなと思いましたが、一方で選考委員の誰かが言っていたように、今度は夢じゃない話も読んでみたい、というのは言い得て妙でした。
↓アマゾンでの評価はまあまあ。
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