会社が倒産し多額の借金を抱え、一般社会からドロップアウト寸前の主人公が、ぼろアパートでマジックマッシュルームを栽培する男と出会ったことで、自らを見つめ直す物語。一見ドロドロした話のようですが、不思議な設定と独特の世界観で、むしろさわやかな印象を受ける作品でした。
舞台は新宿・大久保。
取り壊しを待つアパートに最後まで残る住人の立ち退き交渉のために訪れた主人公が、なぜだかミイラ取りがミイラになってしまうというなんだか変なお話です。
バブルの記憶も新しい、世の中が不景気だった20世紀末の空気が色濃く、あの頃はバカだった的な説教臭いセリフが多いのが印象的で、自分自身その時代に生きていたわけですが、しばらく忘れかけていた感覚だったので、逆にちょっと新鮮でした。
虚構のお祭り騒ぎの後にどん底に落ちて、もうどうでもいい、マジックマッシュルームでトリップして、何も考えずに生きて行くのだって悪くない、そんな話なのですが、この手の話に付き物の、人間の汚いところ、醜いところがあまり描かれないのが、この作品の良くも悪くも特徴だと思います。
登場人物がみな理性的で、性根が腐った人が出てきません。
例えるなら、藤子不二雄Aではなく、藤子・F・不二雄が描いた『笑ゥせぇるすまん』のような感じ。
毒っ気がなくて読みやすいとも言えますが、この手の話なら思いっきり悪い人が出てきて欲しい気もします。
面白くないことはないのですが、心にぐさっと来ない、もう一声欲しい感じの作品でした。
↓アマゾンの評価もそこそこ。悪い点は特にないんですけどね、、
花腐し(Amazon)
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