絵描きを目指してランパブ通いのロクデナシ生活を送る主人公の、現実と妄想が入り混じるボヤキを、独特の文体でとりとめなく展開する作品。とても読みづらい文章で、脈絡なく次から次へと場面が変わり、読んでるうちに頭がぐちゃぐちゃになります。
果たしてこれは面白いのか。賛否両論あり、とても悩みますが、私はどちらかというと否定派です。
確かに独自の表現スタイルではあるとは思うのですが、とにかく読みづらい。
しっかり文字を追っていけば、一応プロットはわかるのですが、さらっとした読み方だとめまぐるしく変わる場面についていくのが大変で、「で、いま何の話だっけ?」となってしまいがちです。
とはいえ、成功した友人が妬ましいけど労働は嫌い、見合い結婚はしたくないけど人の結婚はうらやましい、という小市民的なロクデナシ感は共感できます。
しかし、やがて破滅的なロクデナシ感にエスカレートするに連れ、もはや共感の域を超えてしまい、主人公を理解するのが難しくなります。
心の中を心のままに描くスタイルなので、日本語としてはめちゃくちゃだとしても、自分自身の心の動きと感覚的にシンクロしていれば、生々しさがあるんだろうなと思いつつ、一方でシンクロできないとこの文体は辛いものがありました。
↓賛否が分かれそうな作品ですが、意外なことにアマゾンでは高評価。町田氏のキャラもあるんでしょうね。
きれぎれ/町田康
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