蹴りたい背中/綿矢りさ(2003年下半期受賞)


史上最年少での芥川賞受賞で一躍話題になった作品。当時から賛否両論あり、自分自身リアルタイムでも一度読んでいるのですが、全く内容を覚えていなかったので、10年ぶりに再び読んでみました。

ストーリーとしては主人公の女子高生が、クラスの仲良しグループに馴染めず、というより仲良しグループ的な交友をめんどくさく思っている(実は悩んでいる)ところに、同じくクラスで孤立しているオタク男子となんとなく仲良くなる、というような話。

たかだか高校生の悩みなので、しょうもないと言えばしょうもないのですが、しかし、小中高時代というのは、強制的に一日の大半を密室に監禁されているような閉鎖的な毎日なので、そんなしょうもないことが世界のすべてだったりもして、仲良しグループに属する人の気持ちも、属さない人の気持ちもよくわかります。

そして、大人から見ればしょうもないだけに、なおさらその世界の狭さがいじらしく、思春期ならではの不安定な感情や、深そうで深くない思慮など、当時の自分を振り返って共感できるポイントがたくさんありました。

とても面白く読めたので、作品としては別に批判される内容ではないと思うし、むしろ大人の小説家が決して描くことのない、大人視点ではちっぽけで未熟な話を、あえて臆面もなく描き切ったスタイルは好感が持てました。

ただ、意見が分かれるのは、これが芥川賞受賞作品だからでしょう。

軽いし浅いし、ライトノベルや少女漫画ならいいけど、これを純文学として賞を与えることが適切なのか。

この点はたしかに難しい問題です。

でも、とすると純文学って何なんだ、芥川賞って何なんだ、という議論が必要で、何をもって優劣を決めるのか、そもそも芸術を多数決で評価することはナンセンスなんじゃないか、というそもそも論にも至りそうです。

個人的には未熟なら未熟なりの心の動きが文章で生み出されているなら、それはありなんじゃないかと思いましたが、一方でこういった高校生視点の作品をあまり読んだことがないので、単に自分に免疫がないだけとも言えそうな気はしています。

それこそライトノベルのジャンルではこの手の作品が溢れているのだとすると、果たしてその中でも特に面白いと言えるかどうかは全く自信がありません。。

最後に、オタク男子の「にな川」が、ブサイクなガチオタクなのか、オタクだけどルックスはまあまあなのかによって、だいぶ話の趣旨が違ってくるような気がしました。どーでもいいことですが。

↓アマゾンのレビューでは「だから何?」という発言が多数。
蹴りたい背中/綿矢りさ

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