映画化もされたヒット作です。
最近の芥川賞は文章が上手ければストーリーなんてどうでもいい、アーティスティックであればそれでよい、みたいな風潮があるように感じていましたが、例えば審査員である宮本輝さんが受賞したころはそうではなく、もっと人間ドラマが重視されていたような思います。
そんな昭和の純文学の香りがプンプン漂うのがこの作品。
日雇い労働で食いつなぎ、家賃は滞納、
その日得たお金は酒と風俗で使ってしまう、
友達もいない、将来も見えない孤独な若者の生活。
どーせ俺なんか、というコンプレックスと諦めが本当に絶望的で、
読んでいて「もうちょいがんばれよ」と思いますが、
がんばれないのも含めて、この主人公のダメなところ。
(そして憎めないところでもある)
まさに昭和の世界観で、これが21世紀の小説かと思うと驚きです。
文体や表現も含めて、古き良き純文学の雰囲気があり、
そうそう、やっぱり純文学はこういうのが正統派だよね、と思う一方、
2010年の芥川賞としてこれが選ばれるのは疑問にも思いました。
実際すごく面白いので作品自体に何の問題もないのですが、
懐古主義に過ぎるのではないか、というのが気になるところです。
一読者としてはそれでいいんだけど、文学界がそれじゃいかんだろう、と。。
↓ちなみに芥川賞作品にしては珍しく、アマゾンの評価も高いです。
やっぱり面白い作品がいい、という当たり前だけど忘れられがちな事実。
なんだか熱いレビューも多いです。
苦役列車/西村賢太
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