時が滲む朝/楊逸(2008年上半期受賞)


中国の田舎から大学に進学して、民主化運動に傾倒していく物語。

一生懸命勉強して大学に入って、がんばって国のために貢献できる人間になろう、
という熱い思いがみなぎる前半のじっくりとしたストーリーから、
後半に入って天安門事件から現代をあらすじ的にさらっと流す急展開になんだか拍子抜け。



導入はまるで大河ドラマのような壮大な雰囲気なので、
なんだったら上中下全三巻ぐらいは必要なんじゃないかというところを、
短編でまとめようというのがそもそも無理があるのだと思います。

ただ、だからダメだというわけではなく、設定自体はすごく興味深いので、
それこそ上中下巻で読みたいなあと。

短編にするなら、天安門事件のところで終わった方がよかったかも。


そして、読んでからアマゾンのレビューとかで知ったのですが、この人中国人なんですね。
日本語については全く違和感を感じることはなかったので、本当にすごいと思います。
中国人が書いた日本語文学だから芥川賞受賞したんじゃないかという批判もあるようでしたが、
個人的には全くそうは思わないです。

ひさびさに本格的な純文学を読んだ、という感じがするけど、
短編であるのがただただ残念という感想でした。


↓アマゾンのレビューはちょい辛め
時が滲む朝/楊逸

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