身の回りのごく普通のごく小さい話。
登場人物はみなどこにでもいるありふれた人々だけど、社会の階層で言えば、中の下か、下の上ぐらい。
会社員なら、ああそうそう、わかるわかる、という感じ。
とにかくしつこいぐらい日常が描かれて、
主人公はそんな日常から脱出したいとごく微かに思ったりもするけど、
結局日常のちいさな喜びや幸せで十分だよね、という結論。
何というか、悪くはないと思うのだけど、本当に何もない小説です。
心理描写がとても身の丈にあっていて小市民的なので、
共感しやすいというのはありつつも、小説って共感だけでいいんだっけ、、?
と疑問を感じてしまう作品でした。
ちなみに単行本にもう一話収録されている「十二月の窓辺」もやっぱり同じような話。
女ばかりの職場のイザコザを描いたあるあるドラマです。
こっちのほうが内容が過激なので、ドラマとしては読み応えがあります。
ここまで意地悪な上司もいるのかなあとも思いますが。
まとめると、作品が面白いか面白くないかは置いておいて、
人の心の動きを臨場感を持って文字で表現する、
という点ではこの人は優れているとは思いました。
↓アマゾンのレビューは辛口多し?
ポトスライムの舟/津村 記久子
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