アサッテの人/諏訪哲史(2007年上半期受賞)

良くも悪くも、思わず書評を書きたくなる作品でした。
面白いかどうかというと、全く面白くはありません。
それどころか、冗長で意味不明のところはだいぶ飛ばして読みました。



なんだか実験的であろうとするスタンスが鼻につきます。
さながら訳のわからない現代アートのよう。変速的なリズムのテクノのよう。

でも言ってること自体には共感を覚えました。

日常の連続を避けるために非日常を求めたり、
定型を避けるために非定型を求める行為。

さらにそこを突き詰めて、非日常や非定型のために、あえて日常や定型を意識したり、
やがて非日常が非日常じゃなくなってきたり、非定型が定型化してきたり。

芸術の世界のメタファーとしてはまさにそのとおりだと思うし、
芸術の世界に限定しなくても、日常と非日常、定型と非定型というのは
本質的にそういうものだとも思います。

かく言う芥川賞がその典型かもしれません。

ひとひねりある文学作品が受賞する傾向の強い芥川賞ですが、
「ひとひねる」こと自体がだんだんフォーマット化されてきている気がして、
その定型から逸脱しようとした結果、こんな作品が出てきたんじゃないかと思います。

ある意味、芥川賞の持つ 「先進的な文学という暗黙の定型 」
に対する強烈な皮肉のようにも受け取れます。
ひねれ、ひねれって言うなら、思いっきりひねってやるよ、このヤロー!
って感じ?

とすると、この作品が芥川賞を受賞することも、なかなか皮肉な出来事です。
逆にちょっと粋な計らいのようにも思います。


↓アマゾンのレビューは意外に高評価。
「これって小説なのか?」という意見に強く賛成です。
アサッテの人/諏訪哲史

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芥川賞作品レビュー