とても短い短編なので20分ぐらいで読めます。
よく言えば、「ほんのり心温まる大人のためのおとぎ話」という感じでしょうか。
おそらく著者本人の実体験と思われる会社勤めのリアルな描写。
そして同期の友人との同期ならでは関係性がこの物語のポイントですが、
それよりもリアルな設定下でリアルじゃない事件が起こる
おとぎ話性がとても面白く感じました。
「事実は小説より奇なりを小説で描いた感じ」とでも言うのでしょうか、
芥川賞作品でありがちな、リアルさを求めるあまりリアルなだけで終わってしまう作品とは
一線を画していて、個人的にはそこがこの作品の魅力だと感じました。
文章はですます調で、まるで友人のブログでも読んでいるような普通っぽさがあり、
全く小難しくもないため、読後すぐにはなぜにこれが芥川賞なんだ、、と思いましたが、
あとからじわっと「まあ、言われてみれば、、」と来る感じ。
といっても、卓越してるとまではとても言えないので、
こういうほんのちょっとの「何か」が選考を分ける芥川賞の煮詰まり感も同時に感じました。。
難しいっすね、、
ちなみに単行本にもう1作品掲載されている「勤労感謝の日」もなかなか面白いです。
こちらはより軽妙なテンションで、とても漫画的。
漫画的な面白みを文字に起こすとこうなる、というような作品でした。
↓アマゾンの評価も高し。
あたりまえだけど、読みやすくて面白い作品は誰だって好きです。
沖で待つ/絲山秋子
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