九年前の祈り/小野正嗣(2014年下半期受賞)


大分県のリアス式海岸沿いにある小さな集落が舞台。主人公のさなえは発達障害の息子を持つ35歳のシングルマザーで、旦那のカナダ人と別れて、東京から故郷の大分県に帰ってくる、という物語です。

春の庭/柴崎友香(2014年上半期受賞)


入居者が1人2人と退去していく取り壊しが決まったアパート。その隣には昔「春の庭」という写真集で撮影されたことのある古い豪邸があり、アパートの住人の西さんはどうしても中を覗いてみたいとアグレッシブな行動を取る。あらすじとしてはそんな感じです。

穴/小山田浩子(2013年下半期受賞)


地方都市で働く主人公の女性が、夫の仕事の都合で仕事を辞め、田舎にある夫の実家に引っ越し、不思議な体験をするお話。

個人的には川上弘美さんの「蛇を踏む」のうそ話ぐあいがとても好きなのですが、それに近いおとぎ話性を持った、ちょっと怖くてほのぼのしたうそ話です。

爪と目/藤野可織(2013年上半期受賞)


3歳の女の子の視点で、主人公の女性のことを「あなた」と呼んで物語が進められる二人称小説です。主人公は女の子の父親と愛人関係にあり、女の子の父親、その愛人の主人公、女の子の3人を中心に話が進みます。

abさんご/黒田夏子(2012年下半期受賞)



またまた来ました。最近の芥川賞の風物詩ともいえるキテレツ系作品です。
本来なら漢字で書く単語をあえてひらがなで書いたり、文章が横書きだったり、改行がやたら少なかったりと、とにかく読みづらいです。
途中で完全に読む気が失せてしまいましたが、芥川賞読破プロジェクトの使命感だけでどうにか完読しました。

冥土めぐり/鹿島田真希(2012年上半期受賞)


過去にお金持ちだった時代の生活にしがみつく元スチュワーデスの母と、アルコール依存性で自分は留学さえすれば世界で名を成すことができるという誇大妄想に取り憑かれた弟を持つ主人公が、金と虚栄にまみれた家族との関係に絶望の日々を送りつつも、夫の病気をきっかけに少しだけ光を見出す、というお話。

乙女の密告/赤染晶子(2010年上半期受賞)


アンネの日記に描かれたホロコーストと、京都の外語大学の女の園をオーバーラップさせた、ちょっとユニークな物語です。

しかし、軽い文章なので軽く読み飛ばしていたら、実はなかなかややこしい内容で、あまり読みこなせませんでした。

外語大学に通う主人公は、ドイツ語でアンネの日記を暗唱するスピーチコンテストに出場することになり、何度も読むうちに、アンネ・フランクの隠れ家の「密告」と、乙女と呼ばれるドイツ語ゼミの女子グループ内の「密告」を重ね合わせていくのですが、あえてレベル感の違う観念を比喩としてつなぎ合わせているため、一生懸命対比して読まないと、スッとは理解できません。

共喰い/田中慎弥(2011年下半期受賞)


著者の田中慎弥氏の受賞コメントや偏屈なキャラが先行して一躍注目を集めたこの作品。タイトルからして重々しく、ドロドロで屈折した世界観が想像されますし、むしろそこを期待していた部分もあるのですが、実はそんなことはなく、意外に正統派でした。

道化師の蝶/円城塔(2011年下半期受賞)


出ました、芥川賞の象徴とも言うべき奇妙な作品。「アサッテの人」もずいぶんキテレツな作品だと思いましたが、「道化師の蝶」はそれを遥かに凌駕するキテレツさです。

苦役列車/西村賢太(2010年下半期受賞)


映画化もされたヒット作です。
最近の芥川賞は文章が上手ければストーリーなんてどうでもいい、アーティスティックであればそれでよい、みたいな風潮があるように感じていましたが、例えば審査員である宮本輝さんが受賞したころはそうではなく、もっと人間ドラマが重視されていたような思います。

きことわ/朝吹 真理子(2010年下半期受賞)


謎のタイトルですが、貴子と永遠子という意味でした。
子供の頃、葉山の別荘で出会った仲良し2人が大人になって再会して当時を思い出す、というようなストーリー。

芥川賞作品レビュー