杢二の世界/笠原淳(1983年下半期受賞)


自由奔放に生きる「寅さん」的存在の杢二(もくじ)の自殺までの足跡を辿る物語。杢二自身ではなく、歳が離れた兄が語りべとなって杢二の姿が描かれますが、兄も杢二がどこで何をやっているのかわかっていないので、追跡調査をしながらだんだん実像が見えてくるような構成になっています。

芥川賞作品の場合、文章が難解すぎて全く読めないパターンが結構ありますが、この作品は読みやすい文章だけど全く面白くない、という残念なパターンです。

一番の問題は杢二という人物に全く興味を惹かれない点だと思います。
ここで著者と自分自身にボタンのかけ違いがあるので、どのエピソードにも「だから何なんだ?」というモヤモヤが残りました。正直、読むのが苦痛なぐらい退屈でした。

もちろん「だから何なんだ?」に明確な答えを求めているわけではないのですが、何かしら作り手側の思いが伝わらないと、読むという行為に何の意味もなくなってしまいます。

実際古いので仕方ないのですが、全体に表現が古い感じがするのもイマイチでした。

↓アマゾンのレビューも閑散としてます。
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